ファッション・アクセサリ

2015年7月 4日 (土)

68歳、大海の中の布探しが難問なのです!

<布探しに明け暮れ、水玉ちょろちょろ>

私の目下の、一番の大切なそして大変な仕事は「布さがし」である。ダナンやホーチミンの大きな市場で、汗をぬぐいながらいつも布を探している。黒い水玉の綿の布が見つからず、毎日探していたときは、何を見ても黒い水玉が目の前をちょろちょろするようになってしまって、困ったものだ。事情はこうだ。

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「さくらフレンズカフェ」はダナンの児童養護施設「希望の村」の卒業生の働く場として4年半前にオープンしたが、その「姉妹店」に「アートさくら」という縫製工房がある。希望の村の聴覚障害をもつ卒業生に働く場がないということで、2年半前に、開設された。ここでは、ろうのスタッフ5人と、健聴の指導者2人(1人は希望の村の卒業生)の7人が働いている。

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今は取り扱っているものは、婦人服、ダナンの日系の工場の制服、アメニティ袋、スクールバック、子どもの帽子、着物のリフォーム、刺繍の小物、と幅が広い。何でも作ってしまう。

ここでの日本人の役割は、縫うこと以外万承り。注文を得ること,生地を探すこと、ベトナム人スタッフに内容を伝える、できたものの修正、検品、納品、日本への荷物運び、集金などなど、、、

さくらフレンズカフェがあるおかげで、日本人の知り合いが多くカフェのお客さんが服を注文してくれるケースが多く、これまで、工房の仕事の途絶えたことがないのは、有難い限りです。

 

ここで、何が一番大変か。布探しである。必要に迫まられ、なんとかなる!!とあまり深くも考えず開設した縫製工房。カフェ同様、経験のないものばかりが集まって運営しているので、思いもよらない困難なことばかり。その中でも群をぬいて大変なのが、「布さがし」だ。

 

色、柄、肌ざわり、素材、すべて、日本人の納得する布をここベトナムで探すのは極めて難しい、と布さがしをはじめて、すぐに気が付いた。「日本」でなければならない。色は、淡め、地味目、落ち着いたもの、肌触りは、さらっと風合いよく、素材もコットンなど自然系・・・といった具合。ベトナムの布といったら、原色系、派手で、ピカピカしていて、つるっとした、という調子だ。

 

日本人の注文は綿にこだわることが多いが、「綿を手に入れるのが最も難しく、布を織るのが次に難しい」(ベトナムニューズ、「ザ・ウオッチ」)そうだ。この国に綿の生産はほとんどない。大抵が輸入ものだ。そのために、売っている店が限られる。ここダナンには欲しい綿の布はほとんどない!

 

日本からの注文で、スクールバックの中袋に使う水玉の綿の布が欲しい。ダナン中の布屋という布屋を探し回る。それらしきものがあるが、触ってみてすぐわかるが綿ではなーい。(混紡?)やっと綿らしきものが見つかる。でも、玉の大きさが違う。少し大きければ、派手で上品さにかける。小さすぎれば、ちらちら目にうるさい。で、ついに布を求めてホーチミンにでかけることになる。

 

ホーチミンの中心街、ベンタイン市場の近くのいつもの安宿に泊まる(一泊2000円~3000円くらい)。翌朝早く、いつもホテルの前で待機しているセオム(バイクタクシー)のおっちゃん(この表現の他になんといったらいい?)にまず値段の交渉をする。1万ドンを値切って5万ドンで少しばかり遠いチョロンの布市場に行く。手には、例の水玉の綿の布の見本を握って。

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チョロンの布市場は果てしなく広い。1000件を超える布問屋がひしめく。ここに入りこむと、その布の数の多さ圧倒され、大海に飲み込まれた感じがして、ちょっとめまいがする。ここで、自分の求める布を手に入れるのは、海の中で伊勢海老をさがすようなもの。はっきり言って、途方に暮れる。

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ほとんどは、ベトナムの女の人がよく着ている、上下同じ色柄の、おばさんルックに使われている化繊のつるっとした布が多い。綿はどこだ、綿はどこだ?例の布をひっさげて「これはない?」「これはない?」とききまわる。ほとんど、よく見もしないで「コムコーー」(ない)と返事。なんで、ないの?よくみてよ!件の店番は「コムコー」を繰り返す。じゃあ、メンはどこ?「コンビット」(しらない)。ええ?!少しは、考えた風をしてもいいじゃないかと思うくらい、すぐにこの答えが返ってくる。「コンビット、知らん!」

 

何件かに一軒、年老いた私の様を気の毒に思った店員あたりが「ダイキアー」(あっちー)と指差す。指先は彼方の空へ。どっちじゃい??どこの通りか、何軒先か、全く分からない。もう一度聞いてみるが、指先は以前、空の彼方。日本で道や店を聞かれたときの答え方とは、かけ離れている。

やっと見つけた布も、日本人相手では高く吹っかけている場合も多い。なので「ボッディ」(まけて!)の交渉に入る。布売り場のおばさん達は、貧しかった以前と違って「買ってきナー」なんて、呼び掛けたりほとんどしない。布の上に座り込んでご飯を食べたり、ねたりしている人もいる。のんびりしたものだ。「まけてー!」に応じることも、あまりなく、たいがいは「たくさん買ったらね」と、おばあさんたちはニコリともせず。「おもてなし」までは要求しないが、もう少しサービス精神か、販売意欲がほしいよ。

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2年半前にアートさくらを始めた時、広大な市場の真ん中で、布を握りしめて、「安くしてー」なんて交渉している68歳になる自分の姿を想像しただろうか。でも、この布が手に入らなければ、あの注文が手に入らないのだから、ここでがんばるしかない。

まあ、こんなあんなで苦労して手に入れた貴重な布が、次回買に行くと「ヘッドローイ」(もうない)ということが多いのです。もう何度もきくこの「ヘッドローイ」という言葉が今はこわい!

 

今日も、ダナンの日系リゾートホテルから、日本の座布団の注文があった。注文はありがたいのだが、どうやって布団の布と綿を見つけるのか、これが難問だ。布さえ見つければ、「アートさくら」はローテクながら、いやローテクであればこそ、次から次にびっくりするくらい、心を込めてできあがりのいい製品を作ってしまう夢の工房なのです!